最初からズレていりゃあ、そりゃあ同じものになるはずがない。どこからかズレていくのではなく、ズレているものとして現れなければいけないことを考え合わせてみると、一旦ボーっとしてみよう。そうして初めて、この静けさと一体になることが出来たのを感じている。
何かの方向づけがあったり、型らしきものを見つけたり、もうそういうことが、そういう動きが、中身にかかわらずにひとつのズレを作っていますよ、という声といえば声を、もう何度も聴いている。
あらかたの記憶を、限定的な風や匂いに置いておき、こちらから徒に確かめたりしない。
もう遅い、とあのリズムで言う。しかし、私には何が遅さなのかが分からない。こうして、幾度も訪ねていく作業は、ならば現実ではないとでも言うのだろうか。うるさく招いている訳でなし、ただ、ただ目を逸らさない場面としてここにある。
こっちなら、濃い色を後に残して、僕ももう一度帰ろう。焼きつけておこうとする努力に、ちょっと苦笑いをしてみたら。変わりばえのしない景色から、去らなきゃいけないことを思うなら。