<488>「おそれに潜る」

 あるがままの驚異にさらされていればいいじゃないか。あるがままのその怖ろしさを、避けずにそこで受け止めていたらいいのじゃないか。この不親切な、感情に似合わない流れは、てんで私などを襲うつもりもない。

 遠近感を失うこの暗い夜に、その他季節を連れていけ。眺めるものに、空間はない。一切の点となり、そこに責任を負おう。

 潜る、潜る、見えてくるものからひたすら逃れて、速度は飽くまでゆっくりと。いかにも、ここが通る道である、と言うなら、妙に息を切らしてみるのもいいだろう。だが、今夜では、今夜ではないはずなんだ。

 もう少し、待ってはもらえないかと、誰に頼む訳でもないが、何故か、ここで固まっていることが大事なのだと思えてくる。動揺した声は、いつだって正しかった。いつだって正しかったが、それは間に合わせの結果にしかならなかったことも確かだ。

 これは、伝統的な疲れだ。もっとも、ここまで露骨に感じたのは初めてだったかもしれないが、ただしいつも横にいたものなんだと言うことが出来る。状況は判断しにくい。だが、どれもこれもが歩いている、と、すれば、まだ大丈夫だと言える。