<349>「起きたな、散らばる」

 器を器として成り立たしめるものは、調子の良し悪しを確かめる素振りもなく、すっと侵入してきたかと思うと、たちまちにもうひとりを存在させてしまった。調子を無視するのは形なのか、内容なのか。ともかくも、雄弁な語りが腹部を渦巻き、挑発的に駆け巡る。いたって平静だと言い聞かせる動揺に気づき、そわそわそわそわ、よく食べられる状態を投げ、どんよりと曇った空気がやわらかく赤らんだのだと思うと、とても俯いて涙している場合ではないことのように考えられた。懸案不足か。懸案不足で夜に眠りが満ち、朝に起床が拡がり散らばってゆく。燃え広がるものは決して灰を落すことのないよう配慮する。なだらかな光景だ。