理解の、量と濃淡

 世の中に、テストを受けたことのない人なんていうのは、なかなか見つけることが出来ないであろうし、そう考えると、

「理解度」

などと言って、理解の及び具合を数字で表すことについては、見慣れている人がほとんどであろうと思われる。例えば、

「う~ん、今のところは10%ぐらい理解しています」

と他人が言っても、その言い方に違和感を覚える人は少ないのではないか。

 ただ、

「理解」

というのは多分に感覚的なものだから、数字で表すことには多少の限界があるとは思う。もちろん、理解の「量」を表すためのものとしてはとても便利だと思うのだが、理解の「濃淡」については数字で表しにくい。

 それは深さ浅さと言い換えても良いのだが、これはなかなか数字では表しにくいのではないか。例えば、

「10%しか理解していないのだが、その部分の理解はとても濃い」

という場合と、

「90%理解しているが、その部分の理解はとても浅い」

という場合とでは、どうも数字表記だけでは後者の方が理解が深く見えてしまう。

 ただ、難しいとは思うが、数字表現で理解の「量」のみではなく、「濃淡」までも表そうとする工夫は可能だと思う。例えば、「量」はそのままパーセントに変換するとしても、仮に、理解の「淡さ」を伝えたいとすれば、10、20、30などの節目的数字は避ければ良いのではないか。つまり、

「大体今は13%の理解です」

と、通常は説明するときに用いない、節目的でない数字を使うことによって、理解の淡さ、曖昧さが多少なりとも伝えられるのではないかということだ。反対に言えば、「量」の多い少ないに関わらず、理解の「濃さ」を伝えたいとすれば、10%、20%などの、節目的数字を使えば良いのではないか。