なだらかな快楽

 それは果たして夢であった。引き寄せるともなく寄り添うひとりの女性に、私は、さしたる違和も緊張も、また不快も抱いてはいなかった。

 しばらくそのままで過ぎたであろうか。ただ寄り添っていただけなはずの私の身を、なだらかな快楽が襲い始めた。

 日頃の経験から、これは絶頂への過程を辿っているところなのだと判断した私は、その過程それ自体こそ、穏やかに続く、絶頂の流れであったということに、目覚めて後、気づかされた。

 夢の中での逸楽から覚めた後の不快を予期していた私は、いつもと異なり、目覚めた後も依然として、なだらかな快楽が続いていることに驚いた。そして、そこに不快が伴っていなかったことにも。

 それは精神であった。肉欲から離れたところで起こる、精神の悦びであった。絶頂とは、精神の充溢であったのである。