あなたは、一体何を見ているんだ

 携帯を見る。部活の後、学校の近くで友達と一緒に飯を食っている最中のことだった。

「携帯見るな」

友達が怒った。曰く、せっかく今会って話をしているのに、どうして携帯なんかに用があるんだということだった。まったくもってその通りだと思った。携帯を見ることは今じゃなくても出来る。しかも、見ている内容は大したものじゃないのだ。

 

 それ以来、私は、人と会っているときには、ほとんど携帯を見なくなった。あのとき、皆でせっかく集まっているというのに、私は携帯を使って何が見たかったのだろう・・・。その場にいる人と話すこと、会っていることを確認することが、何よりも大事なことなのだ。

 ふと、視線を上げて周りを見渡してみた。同じテーブルに座っている友達は、皆携帯を見ている・・・。

「携帯見るな」

と、かつて自分に怒ってくれた友達までもが、つまらなさそうに携帯をいじっていた。

「携帯見るな」

とは、言えなかった。あまりの光景に驚いてしまったからだ。あなたが、大事なことを私に教えてくれた、まさにその人ではなかったのか。

「何を見ているの?」

怒れなかった私は、代わりにこんなことを聞いてみた。ネットだと言う・・・。それはどんな内容なのだろう。大した内容なのだろうか。

 あなたは、一体何を見ているんだ。