<526>「情けないままの」

 別の自分をどこかに任せてしまう訳じゃない。どこか他人事なのねと、目で言われ口で言われ、なるほどそれもそうなのか他人が、マイナスのなかから私に出てきて、

「誰だ、誰だ?」

と揺すぶっている。

 大きな顔が、場所もなく辺りをウロウロし、何を投げ何を捨て、何をまたここで口ずさむのだろう。あら? 渡されたものだけここにあり、渡されていないものは別の場所で、驚きと不確かな怒りとなる。

「出してくれ・・・出してくれ・・・」

 放出の映像に直面し、ビリビリした周囲の表情が数を増し、それを見て初めてうろたえたことに気づく。私から出るのじゃないか、うろたえているのはそこなんだ。

 情けなさがなくなったら駄目なのだという悟りは、きっと皆にも用意されて、そんなことを分かって得意なのはとても嫌なのだと、ここで下を向かせてくれと。地面はあくまでも移動をとめないし歩かせようともしない。