何が不思議って、今まで長いことうっとり眺めてきたはずの人を、今はもう平静な気持ちで見つめている自分が居ることだ。こんな奇妙なことはない。
何の感慨も湧かない訳ではないのだ。しかし、特別な感情を抱いている訳ではない。ただ、
「あっ・・・」
と思うだけなのだ。かつて陶酔していたことの名残のように・・・。同じ場所に座っていることが非常に心許ないようになる。
しかしまた、何事もなかったかのように、陶酔はぶり返す。ズレていたものがハマったのか、ハマっていたものがズレたのか、そんなことは分からない。