<713>「混乱する、静かな穴」

 幾度も、と言えども、こころあり、行動があり、積み重なるものも見えなくてよく(丁度よく)、ふくらみかただけでそれすらも笑顔。

 どうやろう、ふざけてもいず、繋がるとおり、ふた通り、股のまから呼ぶだけ、濡れていても呼ばわるだけ。増えたことと、いつもの癖、特に当然、かき回っていても、うかれて、待つだけ。

 どこを見てもこだわり、どこを見ても役割、どこから見てるのかも言わずに、順番のはしで既に休み。あたらしさを見つめる瞳、になれて後ろまで満足で通す、と親しみに似せて時々崩れる。崩れただけあそこまで見通せて。

 はい、そう、慣れさせ、横で、寝ているだけ、まじれて、ところどころに、汗。ところどころに、見せ、反る、それから、省略のない、出てくるまで同じ、出てくるまでどちらも、出てくると驚いて、顔から下へ大袈裟が垂れてくる。たれと言ってはうなずきが回る。混乱は静かな穴へ向かって転がりながら失せていく。

<712>「満ちる貌」

 変わりばな、で眺めた。直前まで声のしていた、おかしな掛け合いが始まる。平生のもの、捨てた、破られて、天井がどこかと聞かされる、くらくらした、小刻みでは頼りない・・・。

 きっと、大まかな話、異なりに似て、流れ、言葉の端に、かたまりだけぶつけられ、いや待て、ども、いやに待って、いても、譲り合いに蓋をしていくだけ・・・。

 あの子は顔に似だした。全体として、いや、部分々々その要素が、全て顔にあらわれだしたので、この上もう表情などいらなかった。

「表情を取れ」

そうしばらく大きな声で言った。誰彼にきこえるように大きな声で言った。届く範囲にいるのならばまた、全てを聞いている必要があった。

 真剣さ、縁遠く、なればなるほど、真剣そのものの、かたち、まだ、私自ら食べるものがあって、特別の用意と、ほぼ無関係に、旺盛、旺盛であればこそ、目の前に長く、それは長く穴が開いている。不可能ごと見ている。突然放り出されて何の驚きもなく、ただ立て続けに覗く、そして食べる。たてよこ一斉に、私の仲間で終わる。気がついたときに、気がついたときの、たらふくさを見る。

<711>「浮く、歩む」

 難しいには違いない話で、夕べに似通う、いつも、可能な限りを説明して、そのほとんどを忘れてくれと願うのには、平凡な、しかし一回きりの来し方があった。触れ合う度笑顔で、逃げ惑う為に、空間は余計に広がった。誰信じる訳でもなく、ただただ広くなる場所にあって、歌声とまずまず移動、まぐれは移動にあって、静止には同じがある。しかも、まぐれを望む気持ちもなく、好転に対しての見解もなく、ただ膨らんだ。話し方とて忘れたと語る笑顔と一緒に膨らんだ。無理もなかった、手抜きもなかった、誰も集中とは呼ばないものだけがあった。それだけで一杯になっていた。何かを出さなければいけないとすれば、やはり決意表明を出していた。外へ出していた。何かを表すことは関係がないと思えたので、うなずいたり、傾げたりを交互に繰り返している。違和感だけで成り立っている、表しただけで消えてしまうような違和感と、全然そうでないもので浮かんでいる、浮き上がっている。浮き上がっているだけ次の一歩のことを、考えやすくなる。

<710>「出来事と言葉」

 例えば、退屈していたから、と説明されれば、ああそうか退屈していたからなのかと思い、なんとなくそうしてみたかったから、と説明されれば、ああなんとなくそうしてみたかったからなのか、と思う、なんて、そんな形でそのまま納得出来るだろうか。大きな出来事、衝撃的な出来事が片方にあり、もう片方にはなんらかの理由説明がある。それがそのまま素直に双方結びつく、とは思えない。出来事は言葉ではない。出来事は言葉の形容を拒否こそしないにせよ、容れないのではないか、また、容れられないのではないか。退屈だったから、とか、イライラして、だとかの説明がなされても何も分かったことにならない。出来事の訳の分からなさ、起こってしまったことの不思議さに、何ものも加えられない。おそらくその当事者も、同程度に分かっていないはずで、説明しろと言われても一向に適切な言葉が見つからない、もっともらしく説明してみたところでそれは出来事と何ら関係のある言葉にならないことを感じているだろう。

 当事者に言葉はないが、とにかく無理やりにも説明してみせる。聞く方も、それら説明で何が分かるようになる訳でもない。そうすると一体これらは何のためにひねり出されているのだろうか・・・。

<709>「重なる、重なる、巻く」

 無言の人、同じ動きがないと、突然漏らして、複雑な顔とて巻き始めてゆく。物凄い速さのなかにある訳でもなく、ひらめきがそこらじゅうから噴き出し始めているので、初めからここまでを真っすぐな一本の糸として見ることは出来ない。

 おそらく混ざったり、あちこちに飛び飛びになったりしているものが、コツン、という音で一斉にこちらに顔を向ける、そんな動きをひとつ、あるいはひとりと呼んでみるのかもしれない。なかには、こちらとあちらではまるで関係がないのだと言っているところもある。事実まるで関係がないように見えて、確かにその通り関係もないままそのままでひとりだった。

 重ねる、というそんな偉い話ではなく、重なる、という、一体全体訳の分からないものが増えて次々に関わりが生まれてくること自体を見つめている。どうもある一方向へただ進んでいくのではないことだけをぼんやり浮かべて、まとめるという考えを外に出してゆく。

<708>「記号が吹く泡」

 上手く言えない必要があったから、激しくあちら、こちらでひっかかり、言葉ともども知らない時間のなかでとまった。時々感謝にもなり、曰く、

「上手く言わないでくれてありがとう!」

 進むのに大変な困難、伴って一息、呼吸と友達、訊ねながら忘れて、どうして答えなどが返ってきたのでしょうなどは無邪気。諦め方が時刻でよく似ていて、とてもとても苦笑いが新しい、勢いで若返ったような気がしていて、ひとりは空気、ひとりは眺めるだけと知る。適当にいれ、適当に滑り、話されていることどものなかで次々に泡を吹く、こりゃあ大変だ、実にテーマ、テーマという名前をギリギリまで引きつけて、見極める、冷静な態度であるにもかかわらず、暴走に近い。列車はうるさくなければならない、と小声で訴えかけ、両隣の人々はぎょっとする、というのも、べらぼうに声が小さいからであったが。

「もしよろしければもう少し近くへ寄りましょうか?」

などと、喋らずにいてくれて、と思っていた過去は消え、重要なことは特に素早く伝っていく訳ではないと分かると、記号の上で少し跳ねたりしてみせる。例えば、訳の分からないところへひとつ目安となる棒を通すと、確かになんとなくは事柄が伝わる。しかし、それはそこでめちゃくちゃさを失ってしまい、初めより何が何だか分からないってえことになる。それは私には困るのですよ、などと言ってみても、なんにも起こらなかったかのように周りの人は笑っているだけだ。どうした、元気もくそもないだろう、と、激しい。舌であれ、激しい。忘れていたことで行進が始まる、別段不思議な音ではない、ただ、荒れ方が分からないだけだった。

<707>「ひとりの呼吸は意味ではない」

 喚いている。喚いてほしい・・・。些細なこと全部、問題がないのだと言っている問題でないのだと言っている。大事なことって何だ、細かくないことって・・・。それは、規模が大きいだけなのではなかろうか、どう扱ったらいいのかが分からないほど、大きいだけなのではなかろうか。しかしまた、そこから大きくなればなるほど、些細だという考えが顔を覗かすのではあるまいか。うわあ、これだけデカいのならあたしにはもう関係ねえや。

 都合の良い大きさには、何が託されている? ある目から見て、ある角度から些細ではあり得なくなるその大きさには、一体、何が託されているのだろうか。例えば、ひとりの呼吸は意味ではない。ただ些細でも、オオゴトでもなく、また、再び回転する理由もない。しかし、ひとりの呼吸は意味などではないのだ。

 このちっぽけな、などという比較が、まるで的外れであるからこそ、延々と細かく分かれてゆくし、訳の分からないところで突然に現れたりして、少し戸惑っていたりもするのだろう。丁寧に挨拶したり、雑に投げたりしたところで、回想はあくまでも舞っている。