日頃から私が書いているものを読んでくれている人、そして私に近しい人ならよく知っていることとは思うが、皆が当たり前に馴染んでいっている性愛関係というものに、どうも上手く馴染んでいけないという悩みを、私は持っている。
おそらく、上手く馴染んでいけない理由は様々あると思うのだが、そのひとつに、
「欲情を悪者にして、分けてしまった」
という理由があると思っている。
誰に言われたのか、教わったのか、そもそも、言われたり教わったりしたかどうかも分からない、
「ただ欲情しているなんてのは最低で、異性を好きだという気持ちはそういうものではなく、もっと綺麗で崇高なものだ」
という曖昧な常識みたいなものを、疑ってみもせずに、よく考えないまま受け容れて、自分の中の欲情を悪者にし、純粋な好きとは別のものだとして分けてしまったのだ。
しかし、そこを分けた結果として、
「純粋に好きだ」
という感情に出会うことは一度とてなかった。それもそのはずだ。欲情は悪者でも何でもなく、
「相手に魅力を感じているかどうか」
を教えてくれるセンサーのような役割を担っているものなのだから、そこを分けてしまうと、センサーをまるごと失ったかのような状態に陥ることになる。それでは誰が好きかなど分かるはずもない。
悪者は欲情それ自体ではない。思うにまかせて欲情を暴力的に表す(無理やり襲う、嫌がることをするなど)ことが悪なのだ。
欲情は大事なセンサーなのだ。いくら、
「この人は良い人だな」
と思う異性に出会ったとしても、その相手に欲情を感じなければ、それ以上親密な関係にはなっていけないだろう。欲情を悪者にしてはいけない。