狡猾

 どう転んだっていい、何をしていたっていいんだ、そう思っていることは確かで、どこにも嘘はないはずなのだが、そういう発言をしているそばから、どこか、自分自身に欺瞞を感じていたりもする。

 狡猾、というか、他人には何だっていいんだと言っておきながら、それが何なのかははっきりとは分からないけれど、自分だけはいわゆる、踏んでは行けない地点というのをぼんやりと知っていて、ひょいひょいと避けているような、そこは通ってはいけないと知っているのに黙っているかのような欺瞞を覚えるのだ。

 だからといって、あえて危険地帯を隈なく踏んで廻ることも、決して誠実とは言えないだろう。わざとらしい。何を言ってもわざとらしくなるから、他人に言えたことなど何もないのだが、かと言って黙っているのもまたわざとらしい・・・。