「ホント、単純ね」
話を聞いただけでは判断しかねるので、ははあそうなのかねえ、という具合に黙っていた。
「どうしてあんなにバカなんだろう」
なるほど、バカで単純ね・・・。現場に居合わせた訳じゃあないので、依然としてそれがその通りなのか否かの判断がつけられず、ただ、聞きながら、バカで単純であることの何が悪いのかがよく分からなくなっていた。
聞いているうち、バカにも単純にもなれないこの人の悲惨さの方ばかりが際立ってきて、そうすると、この人はあんまり可哀想だと思いながら顔色を窺うと、バカでも単純でもないというところへ、無理やりの優越を見、あるいは見ようと努力している最中だったので、そのまま何も言わずにおいた。