ベランダでは駄目

 今いる場所と心的状態とは繋がり合っていることが多く、例えば、家という空間の閉鎖性と自己の閉鎖性とは、どちらがどちらを導いたか、相互に影響を与えあっていることがあり、また、自己が閉鎖しだしたときに家の中を求めるのは、その閉鎖性に吸い寄せられたのだとも言える。

 別に、それはそれで構わないし悪いことではないのだが、何事も行き過ぎというのは良くないもので、親密さを感じるあまりに、家の空間に留まり続けていると、自己がその影響を受けて必要以上に閉鎖してしまい、今度は逆にその空間にいるのが苦しくなってしまったりすることがある。

 そういうときは言わずもがな、外に出て行ってまず環境の開放性を確保しなければならないのだが、

「外に出なきゃ」

とわざわざ思っているときというのは、それだけ既に自己が閉じてしまっているときでもあるので、ただ外に出るというだけなのに、これが意外にも難しくなってくる。

 そこで、

「外気を吸いさえすれば・・・」

と、せめてものあがきでとりあえずベランダに出てみるのだが、外気に触れることは結局慰み程度の効果しかもたらさない。ベランダではまだまだ閉鎖性が強い、つまり外気に触れていようがやはり家の中なのだ。だから、状況を打開するため、閉じすぎた状態を脱するためには、どうしても玄関から確実に家の外へと飛び出す必要が出てくる。だが前述したとおり、それをやるのはなかなかに難しい。閉じすぎた自己の状態は、家の外との相性があまりにも悪いのだ。しかし、その相性の悪さに飛び込んでいかないことには始まらなかったりもするから難しい・・・。