「ただ、そう」だけじゃもの足りない やっつけられたい

 以前、『そういう気分じゃないから、遊びたくないと伝えるのは難しい』というのを書きましたが、この、

「ただただ嫌だ」

という気分、感情というのはやっかいなもので、話を切り出す側に回った時は、

「ただただそういう気分じゃないからって言っても上手く伝わらないなあ・・・」

ということで悩むのですが、ひとたび話を切り出される側に回ると、

「ただ遊びたくないって何だよ! 理由を聞かせてくれ!」

という感想を持ってしまうんですね。自分だって、

「ただただ遊びたくない気分」

になることがあるのだから、相手もまた同じような理由でもって切り出してくることがあるだろう、ということは頭では分かっているのです。それでも、矛盾するようですが、何故だかそれ以上の理由を求めてしまうんですね。

 これはおそらく、話を切り出される側に回った時に、

「ただ遊びたくない気分になることは誰にでもある」

という事実が分からなくなってしまっているが故に起こってくる矛盾ではなく、その事実は分かった上で、しかしそれでは何だかスッキリせずにモヤモヤするから、

「断るならいっそのこと、しっかりぶった切ってくれ」

というように思ってしまうことから起こってくる矛盾だと思っています。話を切り出されたとき、

「ただ気分じゃないから」

だけではもの足りないんですね。やっつけられたいんです。

 これは不思議な性で、例えば、良くドラマなどで見られる光景にも似たようなものがあります。

「別れましょう」

と切り出された男性が、

「どうしてだよ、理由を言ってくれよ」

と女性に向かって問いただすんですが、女性の方は、

「もう、そういう気持ちにはなれないの・・・」

というようなことを言って答えることがありますね。私は、多分これで女性の方は答えの全てを言っているんだろうと思うんです。

「ただただ、もうそういう気分じゃなくなった」

というのが全てで、それは何故かという理屈は、必要に応じて後からむりくりに拵えられたものだと思うんです。

 ですから、男性がここで、

「そうか、もうそういう気分じゃなくなったのか」

と納得すれば、男性はそれ以上、むりくりに拵えた理屈を女性にぶつけられずに済むのですが、それでは満足できないんですね。たとい、

「ただただそういう気分じゃなくなることがある」

という事実を分かっていたとしてもです。だから、

「どうしてだよ、ちゃんと理由を言ってくれよ」

と、あろうことか、自分の傷口を拡げるためのパスを、自分で供給してしまうんですね。そこで、迫られた女性は、別に心底そう思っている訳ではなくとも、

「だって、あなた真面目すぎるのよ・・・」

であるとか、

「あなた、優しすぎるのよ」

というような、むりくり拵えた理屈をぶつけざるを得ないんです。これでもって男性は無駄に傷つくことになります。

 しかし無駄に傷つくと知っていても、

「ただ、気分じゃなくなった」

と言われるよりは、むしろメタメタにやっつけられるほうがマシだから、どうしても理由を迫ってしまうんです。