<3792>「所感(285)」

 人生って、始まりから終わりに向かってる線と。

 

 終わりから始まりに向かってる線の。

 

 二本の逆向きの線が同時に走っているように感じることがある。

 

 始まりから終わりに向かう方は、分かりやすい。

 

 何にも知らない、経験していない未熟な存在が。

 

 次々に色々な経験をし、新しいことを知り、学び、身につけ。

 

 それらもやがて褪せ、新しい経験から知れることも少なくなり、老いて、死ぬ。

 

 

 一方で、終わりから始まりに向かっているという感覚は、どうにも説明しづらい。

 

 誰もが、という訳にはいかないだろうが、我々は、幼き日、祖父や祖母と出会っている。

 

 もう、終わりの日が近づいている存在の、近くにいつもいる。

 

 その存在から、私は、有形無形の、メッセージを無数に受け取っている。

 

 何かが分かる訳ではないが、そこへ私は同化する。

 

 ゴールから、私はスタートしていると感じるのは、そのためかもしれない。

 

 もう、最後を知った状態から、ゴールから、いわば逆戻りする。

 

 人生というやつには、一体何があったのかを、スタートへ戻るべく辿り直すような。

 

 答え合わせを、今からしにいくような。

 

 その道を進んでいると、私は、不思議に自分がどんどん新しくなっているのを感じる。

 

 背負ってた疑問、不可解だった点が、ひとつひとつほどけて取れていくような感覚だ。

 

 そういうとき、私は、紛れもなく生まれる方へと戻っている。

 

 スタートへ、向かっている。