街を歩いている。
前と同じように、同じ道を歩いているだけなのに。
現実が、確実に変化していることが分かり。
自分が何重にもなったような、奇妙な浮遊感に襲われることがある。
その感覚は、悪くない。
とても心地良い、という類のものでもない。
生きている現実が変化したこと。
自分が完全に別の人間になったことが分かる瞬間の不思議さ。
数カ月前の私と、今の私と、完全に別のものなのに、どれも私であるという事実が、私に、不変の1本の線を通していることに気がつく奇妙さ。
そしてそれは、生まれたばかりの月日にまで延びていく、ということの途方もなさ。
時々、生きている今の現実から剥がれて、こういう、浮遊した場所に辿り着く。
それは、より良く生きたいという願いや、楽しみ、喜び、悲しさ、怒りのどれでもない。
私はその場所に立ったとき、あ、またここに来たな、と思うだけ。
発するべき言葉も、取るべき行動も、何もない。
街を歩いている。
新しく現れた、私とは思えないそれを、また私にするために。
私は、同じ道を歩いている。