<3750>「所感(265)」

 街を歩いている。

 

 前と同じように、同じ道を歩いているだけなのに。

 

 現実が、確実に変化していることが分かり。

 

 自分が何重にもなったような、奇妙な浮遊感に襲われることがある。

 

 その感覚は、悪くない。

 

 とても心地良い、という類のものでもない。

 

 生きている現実が変化したこと。

 

 自分が完全に別の人間になったことが分かる瞬間の不思議さ。

 

 数カ月前の私と、今の私と、完全に別のものなのに、どれも私であるという事実が、私に、不変の1本の線を通していることに気がつく奇妙さ。

 

 そしてそれは、生まれたばかりの月日にまで延びていく、ということの途方もなさ。

 

 時々、生きている今の現実から剥がれて、こういう、浮遊した場所に辿り着く。

 

 それは、より良く生きたいという願いや、楽しみ、喜び、悲しさ、怒りのどれでもない。

 

 私はその場所に立ったとき、あ、またここに来たな、と思うだけ。

 

 発するべき言葉も、取るべき行動も、何もない。

 

 街を歩いている。

 

 新しく現れた、私とは思えないそれを、また私にするために。

 

 私は、同じ道を歩いている。