<3327>「所感(59)」

 例えば、私は世界一の詩人になると言っている。

 

 そう表明する大馬鹿者として生きると。

 

 そういう物語を生きると。

 

 

 んじゃ、仮にそうなったとする。

 

 そうなったって、どうやって判断するのかも分からないけど、自分でもそう思うし、世界の人も大方そう思っている状況に入ったとする。

 

 賞をもらったり、賞賛を受けたりという状況になったとする。

 

 

 ・・・じゃあ、あんた、そこで死ねるかって言われたら、多分死ねない。

 

 こわすぎるし、冷や汗かきまくるし、あと、そんな絶頂の状態で死ぬのなんか、名残り惜しくて惜しくて仕方がないと思う。

 

 

 そうすると、やっぱり、明らかにここがピークだなと分かっていたとしても、死ねないよな。燃え尽き症候群とかにはなるかもしれないけど。

 

 そいでズルズルその後も、いやあ死ねるわけないよなあと思いながら生きてしまうだろう。

 

 

 まあ、人生をそういう劇ととらえたとしても、絶頂では死ねないよな。

 

 そっからの急展開というか、転落に近いものがないと。

 

 転落して、ぼろぼろになり、人間がただ生きているという気迫だけでなんとか現実を這い、死に口上を力強く述べ、華々しく散る、というのが劇的といえば劇的か。

 

 夢とか、生涯の目標って、今日明日に叶ったらしょうがないから遥か遠くにそれを設定するわけだけど、いつの間にか気づいたらなっていて、さあもうピークですよ、これ以上はありませんよって状態に着いちゃうって、嬉しいかな。私は結構生き死にもかかわってくるからこわいと感じる。