<3021>「『かいじゅう』」

 新宿K's cinemaにて。

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 毎日、毎日が大舞台だ。

 

 それは、表現に掴まったものを待つ宿命。

 

 俺は、いつかこいつに食い潰されてしまうのかもしれない。

 

 

 絵を描くとき、西村さんはうなり声を、笑い声を、悲鳴をあげる。

 

 かいじゅうと名指される、その存在の、際の際のところから、

 

 どこへ向かうともしれない声が、溢れ出す。

 

 声は、身体を駆動する。

 

 その働きを越えて、声は、そのまま、表現へと変換される。

 

 泣き声が、笑い声が、怪物の唸りが、

 

 そのまま、色、線の混ざりとして、眼前に現れる。

 

 

 西村さんと、西村さんの母との二人きりの生活は、その底にいくつもの危うい契機があったことを包んで、平穏だ。とても静かだ。

 

 私は、私の絵を見に行かない。

 

 何だろう、私の人生って。

 

 かいじゅうは、森の奥深く、誰にも知られない場所で、

 

 しずかに、たばこを吹かしている。

 

 乗り越えなければならない、危うい地点が、この先に、一体いくつあるのだろう。

 

 知らない。

 

 私は舞台に上がるだけ。

 

 毎日、毎日が大舞台だ。