新宿K's cinemaにて。
毎日、毎日が大舞台だ。
それは、表現に掴まったものを待つ宿命。
俺は、いつかこいつに食い潰されてしまうのかもしれない。
絵を描くとき、西村さんはうなり声を、笑い声を、悲鳴をあげる。
かいじゅうと名指される、その存在の、際の際のところから、
どこへ向かうともしれない声が、溢れ出す。
声は、身体を駆動する。
その働きを越えて、声は、そのまま、表現へと変換される。
泣き声が、笑い声が、怪物の唸りが、
そのまま、色、線の混ざりとして、眼前に現れる。
西村さんと、西村さんの母との二人きりの生活は、その底にいくつもの危うい契機があったことを包んで、平穏だ。とても静かだ。
私は、私の絵を見に行かない。
何だろう、私の人生って。
かいじゅうは、森の奥深く、誰にも知られない場所で、
しずかに、たばこを吹かしている。
乗り越えなければならない、危うい地点が、この先に、一体いくつあるのだろう。
知らない。
私は舞台に上がるだけ。
毎日、毎日が大舞台だ。