<1829>「私は種になります」

 水の上に身体をのべ、、

 あたしは、静かに浮かぶ、

 白い髪を垂れた人が一歩、また一歩、とこちらへ向かい、

 私の横で止まる、、

 私は起き上がらなかった、、

 その人はしゃがみこみ、、私の耳元へ来て、ひと言、ふた言つぶやいた、

 私は総身が空になった、

 白い髪を垂れた人は立ち上がり、ゆっくり、ゆっくりとその場から去る、

 私は、中空へ身体が浮くような、そんな身振りで、その水の上へ立ち上がる、、

 しばらく黙っていた、

 風のなかにいくつもの粒が紛れて去ったあと、、 

 身体が動くのを感じた、、

 

 私は種になります、、

 そのつちへ沈み、

 私は自然に種になります、、

 長くゆき、、身体に時間をかけて、、

 そこから手を出します、、

 あたしは、種から直接に手を出して、

 静かに歌います、

 身体を合わせます、、

 その、沈黙のなかで、つちに知られます、、

 私は陽をみたいのでした、、

 その呼吸が、まったく空になるまで、かわきたいのでした、、

 私は、すじを幾つも持って、、

 そのひとつひとつが身体のなかで振るえるのを、、

 今たしかに掴んでいます、、

 あたしはなにか身体が次々に、

 燃えよう燃えようとしているのを感じて、、

 これをひそかに剥がずにはいられない気がしました、

 内があるなら、全部見せてやろう、、

 そして次々に、燃えていよう、

 とそう思ったのです、、

 

 私は静かな熱と、苛立ちを連れていました、、

 はあなにかこれは長くかかる、

 静かな糸のまんなか、、

 私はこの揺らぎに従い身体を振るっていました、、

 私はこのささやかな振れのなかへ出て来ました、

 なにかおかしいんだよな、、

 私はこの振れで出で来た種なのだから、、

 ああして、

 水の上へ浮かんでいるところへ、、

 声に掴まるはずはないのです、

 はずはないのですが、、

 そうしてのびたあなたの手にも、

 熱がこもっていて、

 それに触れたらただそのまま、

 漏れていくよりほかにはない、、

 私はまたここから先へ浮かんでいくのでしょうか、、

 音がきこえて、、

 足から足へ、伝いながら、

 この響きを作り・・・