<791>「手を湿りへ招ぶ」

 あれほどの声、声にまろんでゆく。背を見せ、お互いにのち、酔いが語る。ヨイドレ、おそらくふたつ。対象にひどく吸いついていて、唇。

  こんだしょうたいした

  こんだ、あたしが招んだ

 手前に光る。分からずやのずっと、記憶にかじり、つきつつ、不機嫌なズレ。手前触らせるあたしのなか、ずっとずっと湿潤した、何の温度、とも言われぬ。

 数えから、空白に生まれた。招ばれて垂れて、むしりのなかで、べとつく。まずまず頭の内外をひた走る。殻にして返す。当たり前のことが赤面した。塗って、さあでも、キリがない。

 向きがめり込んでいる。一滴では余る。一滴では多過ぎる。こぼれた人のよに、まじと押し黙っている。手は映えない。手は潜っていく。まるで別人を匂う。招待された別人を匂う。まさぐりがいつまでも消えない。