<574>「よくある朝」

 ちょっとちょっと、と、何だかひどく揉めているらしいふたりの間に割って入って(コーヒーをこんなところで飲むのはどうなのか、など、飲食禁止でもない場所で何を言っているのだろうか)、まあまあまあ、少し落着きましょう、落着きましょうやと汗をかきかき言うと、

「へ?」

「あはっあっはは。あっははは」

とふたりして笑っている。こちらが汗を垂らしているのにあんまり失礼ではないか、云々。

「いや、ただ揉める必要があると双方で認めたもんですから、毎朝ここへ来て揉めているんです。理由はありません。内容は何でも構いません」

時には本気の殴り合いにもなりますよ、あっははは。なんと、ここは私がいつも通る場所と同じ場所だろうか。現実にしてはあまりにリズムが過ぎる。警察へ引っ張られていって、ふたりしていつまでも笑っているもんだから警察は怒った怒った。いくらおじさんでもかわいいぐらいに怒ったと。そんで、こんなところまで調べなくていいだろうという所まで洗いざらい調べられ(もちろん何にも出ないですよ。ただ揉めたいだけなんですからねあっはは)、ポーンと放り出されたあと、急に熱が冷めたのか真顔でふたりはそれぞれの家路についた。思い出し笑いはついに私をも巻き込んだ。