<252>「舌、埃」

 無表情がゆっくりと迫って来る。ぎこちなく笑った分だけ、何だよと言った分だけ追い込まれていくのを感じた。漸次変化、拡がったものは壁であり、鼻の腔は出入り口ではなかった。窒息した壁は休まるところを知らず、酩酊のタチ。千鳥足の渡る唇は、渇き、潤い、どばっと溶け出した舌の足跡、次々に並び、二枚舌、三枚舌・・・。薄赤く敷かれたマットに腰を下ろし、埃の粒が宙を舞い、失いかけた味覚のお供をするのは、そこのお前。