<235>「なに、これの少し分かってくるもの」

 何ものかより大きかったり小さかったりすることによって何かが分かってくる訳でもないのだから、分かっている存在だったり、核となるものだったりを、すごく大きな(物理的に)ものに求めたり、小さなものに求めたりしてもしょうがないのだろう。地球全体を覆うような大きさに変化したり(宇宙全体でもいい)、目に見えない粒のような存在に変化したりしたところで、肝心な部分は結局何も分からないままだろうと思う。

 何か核心的なものを掴む、それはやはり間合いにおいてであって、また、ズレみたいなものなのだろう。大きさも場所も全く変化しないのに、こう微妙に呼吸がズレる、気持ちが揺れる、ふっと他のことに意識が向く、そういうことで何もかも分かってしまう(あるいは何にも分からなくなってしまう)。非常に曖昧なことだ。物事が曖昧に分かる瞬間というのをおそらく何度も経過してきたはずだ。それは、特別印象に残る瞬間ではないので、ただ何となく過ぎてしまうのだが、曖昧に分かりかけるあのねっとりさを確かに知っている。