この人って一体何だ、どういう人だ。そういうことは情報が増えれば増えるほど明らかになってくる訳ではないように思う。ハッキリしてくるのは輪郭だけで、中身の理解は情報の多さと必ずしも比例しない。いや、そこを詰めればどうにか明らかになってくるはずだと決め込むと、情報を得れば得るほど混乱を来たすことになるだろう。

 では、内容物、あんたは誰だということがスッと分かってしまうのには何が。ほぼ感覚なのではないか。あっという瞬きみたいなもので。今まで誰ひとりとしてこの人のことをよく分からなかったのに、一度だけその人の家に郵便物を届けに来た郵便配達夫が、話さぬうちから一瞬にしてその人のことをまるごと理解してしまう、なんてことは大いにあり得ると思う。