ジオラマのような、現実のミニチュア版を見て、
「うわあ・・・本物そっくりだなあ・・・」
となるのは良い。ただ、現実の景色を見て、
「あれ・・・? 本物だよな? ちゃんと建っているよな・・・」
という気分になることほど不安なものはない。
現実の建物やら風景やらが、まるで現実感というものを失い、ジオラマ的構築物が周囲の現実を再構築してしまったように映ったときの気味悪さは何とも言えない。現実がミニチュア版となって手許に収まったときに起こる感動は、逆の場合には起こり得ない。
しかし、よく考えてみれば、自然の風景などであればいざ知らず、現実の建物であれば、やっていることの根本はジオラマとそんなに変わらないはずだ。現実の建物が現実感を失って、ジオラマ的に見えてくるというのも、そう考えたら普通のことなのかもしれない。
おそらく、現実に組み立てられた建物を、ただ組み立てられたもの以上のものとして見ていたいという願望が私にあるから、ジオラマ的に映ってきだすことに対して強い不安を抱くのだろう。