上から見ると、よく分かる

 放課後、本来なら参加しているはずの部活を、教室の窓から眺めていた。今日の面談は進路に関する事らしい。同席する予定の親を待つ間、先生とともに教室で時間を潰す。

 「早く戻りたいか?」

 「そうですね・・・」

私の返答に対し、何とも言えない笑みを湛えた先生は、

「ああやってグラウンドで練習している奴らは気づいていないだろうけどな、こうやって上から見ると、やる気の有る無しがよく分かっちゃうんだ。不思議だろ?」

と続ける。なるほど、先生の言う通りで、一生懸命に打ち込んでいる人と、そうでない人との差は、上から見たときに歴然としていた。

 こういうとき、私は自己を省みて冷や汗をかかなければならないのだろうが、それよりも、グラウンドにいる人々のやる気の濃淡を見分けるという、この午後のひと時の営みの穏やかさの方が先に立ち、覚えず微笑してしまっていた。

 面談を終えて、親とともに校舎の階段を降り、グラウンドの前まで来たところで、

「じゃ、これから部活だから」

と別れる。

「面談、ありがとね」

と、わざわざ学校まで足を運んでもらったことについての感謝を述べた。

 ふと、教室の方を見上げると、先生はまだそこに居り、相も変わらずグラウンドの方を眺めていた。親に向けられた言葉の空虚さを、先生にだけは見破られたような気がした。