呆ける

 「ひとりでご飯を食べに行くと、時間を持て余すわ」

という話を聞いていた。だから、あまりひとりでは外食をしたくないということらしい。

 私は、あまりひとりで外食をしに行くことが気にならないのだが、一方で確かに、

「おいしいねえ」

だとか、

「待ち遠しいねえ」

などと言い合う相手がいないと、時間を持て余してしまうのだという理屈は分かる気もする。

 でも、外食に行った結果として、

「いつも時間を持て余しているなあ」

という感じを受けることは無い。では、そういった余っているはずの時間、私は何をしているのだろうか。

 ・・・考えても思い浮かばなかった。それはそうだ、何もしていないからだ。強いて言うなら、呆けているのかもしれない。料理を待っているということすら忘れるぐらいに、ボケーっとしているのだ。

「お待たせいたしました」

と言われて、ふっと我に返るといったような具合だ。

 不思議なもので、呆けている間には時というものが無いように感じられる。だから、そもそも持て余している時間などないような感覚でいるのだ。