自宅への帰り道、自転車にまたがり、信号を待っている。
早く帰らねばならない用もないので、のんびりと待っている。
そこへもう一台、自転車が、私の隣に来て、止まる。
どうやら、この人は急いでいるようだ。
信号が青になる。パーっと駆けだした急ぎの自転車は、ぐんぐんと真っすぐに進んでいき、その背中は徐々に小さくなっていった。
こちらも、進行方向は同じで真っすぐ。だが、急ぐ用がないので、のんびりのんびりと漕いでいた。
おいこらせ、おいこらせっと漕ぎ進め、ふと前を見上げる。何だか見覚えのある背中が・・・。間違いなく、さっきの急ぎの自転車だ。
私が自転車をひと漕ぎするたんび、先ほどは小さくなっていった背中が、またまたぐんぐんと大きくなっていく。ああ、信号につかまってしまっていたのだ。
隣に並ぶ。同じよにまた、信号を待つ。
「つかまっちゃいました・・・。」
「つかまっちゃいましたね・・・。」
と、言い合わんばかりの、ふたりのお見合い、苦笑い。
青になる。パーっと駆けだす。もう追いつくことはないでしょう。おいこらおいこらゆっくりと漕ぐ。
が、小さくなったはずの背中が、また再び大きくなって・・・。
「また、つかまっちゃいました・・・。」
「また、つかまっちゃいましたね・・・。」
と、言い合わんばかりの苦笑いも、心なしか渋さが増して・・・。
青になる。パーっと駆けだす。二度あることは三度あるなど言うが、もうまさか・・・。
「・・・またです。」
「・・・またですね。」
急いだ彼に笑顔は無くて、苦みばかりが顔に出る。
青になる。渡りきったら私は右へ、彼は真っすぐ。
のんびり行こうが、急いで行こうが、ここまでおんなじ時間で着いた。