子:「ねえねえ、僕は望まれて生まれてきたのかなあ?」
親:「ん? まあ望まれたっちゃ望まれたんじゃねえか? ただし、それを望んだのは俺ら夫婦ではねえよ。」
子:「じゃあ誰に望まれたの?」
親:「そりゃお前、国だよ。 なんでも、国家を維持していくのが大変だから、国の為に子どもを産んでくれってことらしい。まあ、強制された訳ではなかったけど、圧力のかけ方でいやあ、ほぼ強制みたいなもんだったよ。」
子:「それで、仕方なく僕を産んだの?」
親:「本当は経済的にも苦しかったから、子どもを持つ余裕なんてなかったけどさ、さっきも言った通り、ほぼ強制のようなもんだったから、仕方ねえな・・・」
子:「・・・。そんなのおかしいよ。」
親:「ああ、おかしいな。」
子:「だって、国の為に人が存在する訳ではないでしょう? 人が集まったところに、便宜として国を設けたんじゃないか。仮に国がなくなったとしても人は残るけど、人が居なくなったら、国もなくなるんだよ。それなのに、国という形式のために、人間に、子どもを増やすよう強制するなんておかしいよ。」
親:「ああ、その通りだな。本当は形式の方を人間に合うように修正しなきゃならないのにな。残念ながら、国という形式と人間、どちらの方がより重要かを本当に分かっている人は少ないんだ。」