他者に熱狂できる人の羨ましさ

 アイドルファンの人と一概に言っても、各々の持つ熱量というのは人それぞれであって、そのなかには、熱狂的なファンであるというような人も居て、そういう類のファンの人というのは、それはそれは馬鹿にならない数になるだろうと思われます。

 自分の生活そっちのけでお金を注ぎ込む人、売れた売れないの波に合わせて、まるで自分のことのように一喜一憂する人、好きだったアイドルが引退すると、まるで抜け殻のようになってしまう人などなど、熱狂の仕方というのもまた様々です。

 私自身も、アイドルが好きなことには好きなんですが、どこか冷めていると言いますか、自分自身が楽しむための、一娯楽ぐらいにしか考えていないところがあるんですね。どうしても、「自分」というのが、優先順位の一番目から降りてくることが無いのです。なので、熱狂的になっている人を見ると、

「ええ・・・そんな大袈裟なあ・・・」

と思ってしまっているというのが本音です。

 しかし、そんなに熱を入れなくても、と斜に構えている一方で、実は、そうやって熱狂的になれる人達のことがちょっと羨ましかったりする部分もあるのです。何故かというに、

「あそこまで我を忘れて熱狂できたら、気持ちいいだろうなあ」

と思うからです。

 熱狂的になれる人というのは、たとい一瞬だけであったとしても、「自分」というのを、優先順位の一番目から降ろすことが出来て、アイドルという「他者」に熱狂し、しまいには「自他」の区別が無くなった境地に至って、楽しめる人だと思うのです(違うかな 笑)。「自他」の区別がなくなれば、その空間で全てと一体になれますから(表現が気持ち悪い 笑)、それはそれは気持ちいいはずなんです。

 対して私は、目一杯楽しむことは出来ますが、どう転んでも、「自分」というのが、優先順位の一番目から降りてこないんですね。ですから、周りと一体になる快感はどうしても得られない。

 熱狂寸前まで行っても、

「我に帰りなさい」

という自分の中の「要請」が物凄く強いのです。自意識過剰なんですね。

 いつかは私も、我を忘れて熱狂できる人間になりたいなと夢見るのですが、しばらく時間がかかりそうです。