<2315>「蕩尽と温存~野球と日常生活」

 この前久しぶりに野球をやった。草野球ですね。

 ボールに触って投げるのも十数年振りというような状況で、どうなることかと思ったが、とりあえずの形には収まった。身体の野球の蓄積というのは馬鹿にならなかった。

 

 しかし準備面で言うと、正直なところ不足していた。

 むろん準備はしていたのだが、それは、ある程度のところで動けるような準備であった。つまり、のめり込んだときの準備が出来ていなかった。ゆえに身体は翌日以降しばらくパキパキだった。

 

 草野球であれ何であれ、スポーツの魅力的なところ、そしておそろしいところは、

「人をのめりこませる」

ところにある。ある程度のところで軽く動こうと思っていても、いざ試合が始まると、全開で動き出さずにはいられなくなる。

 

 明日身体がパキパキになるからセーブしようなどという考え自体がどこかに消えてしまうのだ。

 だから準備というのは、ある程度のところでなら動ける準備をするのではなく、完全にのめり込んでしまうだろうことを想定して、しなければならない。

 それは、スポーツをしばらく離れてまた久しぶりに復帰して、という過程で初めて知れたことだった。

 次もまたあると思うので、今から、のめり込んでも大丈夫なように準備をしていく。

 

 それと関連して、日常生活だが。

 日常生活を繰り返し行っていくためには、温存が大切である。

 つまり、今日で全部やらない。使い切らない。無理をしない。

 しかし、意識は「今」しか知らないので、気持ちが盛り上がってきたときなどに、

「今、このエネルギーを使い切らさせてくれよ」

という欲望が湧き起こる。

 これには抗いがたく、翌日に負担が掛かることが分かっていながら、つい自身を、身体を蕩尽してしまう。つまり、やり過ぎる。

 

 前まではこの欲望を丁寧に避けるか、抑え込むかして、温存だけで日常を送ろうと思ってきたのだが、またそれはある程度成功してきたのだが、

「今日で使い切らせてくれ」

という蕩尽の欲望に時々付き合うと、翌日は苦しいが、それにより人間が生き生きしだすことが分かったので、今では蕩尽の声を、毎回は聞かないが、時々であれば聞くようにしている。

 蕩尽をしても大丈夫な身体、強い身体を作り、また、より混ざりあったバランス感覚を養っていくというのが今のテーマのひとつだ。

<2314>「身体の骨はどこ、身体の骨はここ」

 あなたならそれ、

 ままで、

 そして、

 身体はどこに、

 放られたまま、どこに、、

 身体をひらいて、

 ゆっくりと、しかし、どこに、、

 ものの行方を見ながら、ここに、

 しかし、どこに、、

 いくつも回転した、

 その時刻はそこで構えていた、、

 しかし、風景はどこに、、

 流れは、

 このいのちはどこに、

 

 働きはどこに、

 探す場所、、

 探すひとつのマアク、、

 身体の新しさ、

 古層からの水を受けて、、

 しずかに沈黙する、

 この、身体の新しさ、

 私は、息をする、、

 それぞれをまた眺めて、

 ここで、息をする、、

 そのそれぞれで生きているに違いない、、

 仕草が、あまりにも、、

 ここへ溢れすぎている、

 身体に繋がって、

 溢れすぎているよ、、

 私はそう思い、

 驚いた、、

 なにだこの時刻は、、

 すさまじいのではないかしら、、

 と、

 身体に向かって伝えながら、、

 私は流れていた、、

 新しい場所で次々に、

 この身体は流れていた、、

 また、ヒがある、、

 でんきがある、、

 身体の、振るえがある、、

 

 まともに目をひらき、

 情報を、食い込ませるよ、、

 それは、どこの声だかは分からぬ、

 どこからか分からぬ、、

 ただ、時代のフウをしたそれらの、、

 ものごとが絡まる、、

 仕草や音やものごと、、

 私はまっすぐに立ち、

 ここが永遠でないのに、

 永遠であることを身体の骨を使って、掴む、、

 知らないだろうから、、

 私は骨を使う、、

 その音のない振動の、なかで、

 あたしは眠る・・・

<2313>「無量に始まる」

 あれ、

 なにがと、言い、、

 ここに、

 流されてください、

 かわりかわるもの、、

 伝ってください、、

 私は、身体を、使うから、、

 ここへ、ひとつ、、

 あなたのそれぞれの動き、、

 ひとつひとつ来る、

 あなたのそれぞれの地響き、

 私は、伝って、、

 

 私はひとりひとり伝って、、

 この場所からそれ、

 あの場所から、熱を、、

 片手に伝えてきている、、

 私はそれを見ている、、

 見ていて、なんと現象は、確かなのだろうと、、

 ひとつの疑問をも、持ち、、

 ここでひとつ揺らがります、

 ああまだきまだき、、

 いくつもの揺れの、

 なかの方、なかの、

 軽やかな時刻の、、

 私の場所、

 私は生まれる、、

 ただ液として、漏れている、、

 声ばかり知れて、、

 私のなかざま、、

 身体ばかり生まれて、、

 このヒのハ、

 ハタに触れる、、

 私はどこか遠いところを見て、

 軽やかにそこで揺らぐ、、

 私ばかり揺らぐ、

 軽やかに私、そこで時刻ばかりを見て、

 無量に、始まる、、

 

 しずかに身体がきこえたこと、、

 私がそうして潜ること、

 からだのなかに入り、はしゃぐこと、、

 点を増やし、、

 揺れを増やし、、

 身体から身体、

 あなたは何かと訊く、、

 私はその場所で応える、、

 これは増幅するのだと、

 静かに応える、、

 あ、そうか、、

 人間の時刻、

 人間の時刻に、、

 あなたは合わさって、

 また身体、

 また月日、、

 あなたは合わさって・・・

<2312>「よく育つ」

 よく見える、、

 その時刻にいて、

 私は育つ、、

 私ははるかかなたを見た、、

 座り、

 書く人間、、

 私はその姿を見た、、

 動き、

 続く人間、、

 私はそのなかにいた、、

 

 ええ、

 ええ、その、振動域に、、

 私は混ざって、

 大きな声をして、、

 ものからものへ触れて、、

 徐々に大きくなり、

 ここでなにからなにまでつながること、、

 私はさわがしく、

 このなかへ走り、、

 このなかへ混ざり、

 ひとつひとつがきこえはじめる、

 粒がきこえはじめる、、

 あたしはこのもののなかのそれぞれに、

 声をかけて、

 次から次から始まっている、、

 それは火であり、、

 長い時間の熱であり、、

 長い時日の行方であり、

 私が話したことであり、

 つながる、、

 また新たにはじまって、

 次々に破裂することであり、

 姿の裏側であり、

 出会う、

 今生きているものに出会う、、

 身体は巻き、

 その呼吸の外に出会う、、

 

 あなたこんな形をした、、

 私は端的に驚く、

 あなたこんな形をした、ものごとなんですね、、

 私は言うけど、

 私はどういうつもりか、言うけど、、

 それはだって記憶だけの話ではないから、、

 あなたは生まれたばかりで、

 なに、変化、変化、、

 いくつもの記憶の外を見て、、

 うん、うん、、

 私は居たの?

 どこに、

 どこから漏れて、、

 ここを見たのだからそれは、、

 なにかどうしても分かる、

 どこへ行くの、

 ずっと底へ、

 底があれば、もっと奥へ・・・

<2311>「死んだら読まないの?」

 あと何年生きるかによって、大体読めるはずの本の量ってなんとなくわかるじゃない?

 そうするとさ、とても不安になるというか、焦るよね、早く読まなきゃって。

 あと何年生きるかによって、大体書けるはずの文の量ってなんとなくわかるじゃない?

 そうするとさ、とても不安になるというか、焦るよね、沢山書かなきゃって。

 

 う~ん、そう?

 そうじゃない?

 いや、死んだら読まないってこと?

 え?

 死んだらもう読まないし、書かないってこと?

 どういうこと?

 死んだって、別に読んだらいいし、書いたらいいじゃない?

 ・・・

 違う?

 まあ、確かにそうだね。

 そうか、そうか、死んだら何で読まないと思い込んでいたんだろう。

 死んだらどうして、書けないと思い込んでいたんだろう。

 そうだよ。生きている範囲だけで考えたらそりゃ有限だし、焦るよ。

 でも別に、死んだだけなんだから、そのあとも読めばいいじゃない。

 そのあとも、別に、死んだって、そのあとも書けばいいじゃない。

 生きている範囲だけで考えたらそりゃ、短いもん。焦るよ。

 死んだら読まないの? 読むでしょ?

 死んだら書かないの? 書くでしょ?

 生きている範囲だけで考えないこと。約束のひとつ。

 約束のひとつ。

 だから今日で全部やらなくても大丈夫。

 死んでもまた読むんだから。

 死んでもまた書くんだから。

 

 そうか、死んでも読むんだ、この人間は。

 そうか、死んでも書くんだ、この人間は。

 人間て、長いな。

<2310>「ものを知る」

 ものにさわると、

 そのまま、

 しずかになり、

 生まれ得て、、

 ここがどこであるかを知る、、

 私はもののなかを探る、

 ひとつひとつの姿で、、

 どこまでも重く、、

 どこまでも平らな物事の、なかで、、

 どこまでも平静を保ち、、

 今はっきりと前へ、

 知っている身体へ、、

 あなたはあたりまえに入る、、

 

 その場所に出ているなら、

 あたしは次から次へと入るから、、

 かなり長い間、ひらいていて、、

 私はそこに潜るからさ、と、、

 ひとつふたつ声をかけ、、

 私は流れる、

 流れたいだけ流れて、、

 今と同じ身体になっている、、

 あとからあとから出てきて、

 今と同じになり、

 私はまたこれに似た身体を探す、、

 ひとつはどこから来た、

 この流れは、、

 この生まれはどこから来た、

 私は叫ぶ、、

 全部が、声、、

 全部が、身体のなか、、

 ことをそこに揺らし、、

 私は見つめる、、

 このさわぎをしずかに見つめる、、

 ひたすら長くなり、

 やや、そこで驚いている、、

 どこからもつちの、

 その熱の流れ、を、

 ひっぱってくる、、

 

 ものが入る、

 うん、

 次々にものが入る、、

 うん、うん、

 そうだね、

 たったこれだけの響きから、、

 あなたはどこと、

 ここへつなぎ、

 ここは溢れる、

 存分に、

 また、

 溢れたいだけ溢れている、、

 あたりがまた、止んだ、

 ぱたりと、止んだ、、

 私は知っている、

 違う人間があるのを、知っている・・・

<2309>「起これ、」

 声だ、

 ・・・

 私は水を運ぶ。

 私は、存在のために、水を運ぶ。

 声だ、

 私は水を運ぶ。

 ん、

 これは、行時だ、啊だ、

 身体のなかだ、

 行時の声がここに、

 これは行時だ、

 、、

 身体を矯めろ、

 タメろ、タメろよ、

 分節、うん、

 分節、うん、、

 分節は、行だ、時だ、啊だ、

 存在の、向こうだ、

 うん、

 

 私は水の中で眠る、

 ひとつの種として、

 私は種とともに眠る。

 ひとつの種として、

 、、メザメはどこダ・・・

 起これ、起これ、、

 くれろ・・・

 

 アタシハヒタスラ種トシテワイテクル、

 起これ、起これ、、

 コえ、

 コえ、

 コえ・・・

 、

 存在の、仮定域のために声を、振動させてくれ、

 存在の、その空白域のために、声よ、起これ、、

 

 うん、

 身体、この、

 身体を、破いてしまいました、

 ひとつの紙のように、簡単に。

 破いてしまいました。

 私は水が出ます、

 私からは、水が、出ます。

 

 種に被る土のひとつひとつから、声が、

 湧いてくる、

 起これ起これ・・・

 命のように静かに白く並んだ紙、

 私の前に並んだ紙に、

 種は、垂れていくのであって、、

 声などは、もう、それから、、

 

 あたしの、ひとつの存在、

 存在、

 存在、存在(存在、存在)は、呪の底で、手を矯めている・・・